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HOME > 書庫 > 西伊豆におけるダイビング事業 福岡県産業教育振興会の補助を受けて伊豆半島のダイビング事情を視察しました。 津屋崎漁協ダイビングリゾート立ち上げのきっかけとなった視察でした。 今回のレポートにおけるダイビング事業とは、一般のダイビングショップやダイビングサービスが行う第3次産業としてのものとは違い、水産業として取り組まれるいわば変形第1次産業と呼べる内容を指します。 現在福岡県内の各漁協は、レジャーダイビングに対してNOの姿勢を貫いており、ダイビングとは漁業生産に害を与えるものとしてとらえています。 しかし、西伊豆地区では、漁業協同組合が積極的にレジャーダイバーを受け入れ、漁業経営の一環として事業を展開しています。 ダイビング指導者を養成している本校では、この西伊豆地区の事業展開を分析し、今後の福岡県内各漁協に経営コンサルティング活動ができるよう、研究を進めることにしました。 土肥漁業協同組合は土肥・小下田・八木沢の3組合が合併してできた漁協です。合併前の土肥では遊魚・民宿経営・刺し網漁、小下田と八木沢では遊魚・素潜り・刺し網漁が行われていました。 今から約13年前伊豆地方では水揚げ量が減少し、伊豆半島内の各漁業協同組合は経営不振に喘いでいました。 その頃、伊東・雲見・大瀬崎の3漁協はダイバーに対して海を開放し始め、ダイバーがそれぞれの地域に経済的に貢献している様子が聞かれるようになりました。 小さなところでは、飲食店や弁当屋、タンクレンタル業者(ダイバーが使用する高圧空気が入ったエアータンクを貸し出す業者)にお金が落ちているということでした。 また、入海料(トイレやシャワー室等の施設使用料)は漁協にとても大きな利益をもたらすらしいのです。 土肥は漁村であることと同時に古くからの温泉街でもあります。 組合員の中にも旅館や民宿を経営する人たちがいます。まずは、この人たちがタンクレンタル業を始めようという計画があったそうです。 しかし、これでは個人にしか利益が出ないため、組合として海を開放することが難しい上、レンタル業を始めるための資金、高圧ガス免許取得の難しさ等、解決が困難な問題がいくつかありました。 また、「ダイバー=密漁者」と思いこむ組合員も多く、ダイバーに対する海の開放は絶対に阻止せねばならないという意見も強かったそうです。 土肥漁協内には台風でも波が入らない「通り崎」という小さな湾があります。手前側はゴロタ石のビーチで両岸は切り立っています。 海底は岸から50mも泳ぐと深くなり始め湾の中心で30mの水深があります。 おまけにこの湾の中心に沈船があり、魚が多く集まっています。 漁協はこの湾に浮き桟橋を設置し、その先端には中心が生け簀となった釣り堀ステージが繋がれています。 施設名は「フィッシングパーク・TOI」、桟橋の付け根には釣り堀の受付を兼ねた管理棟があり、密漁監視所としても機能しています。 常時密漁監視ができる上、釣り客は施設使用料を払ってくれます。 この頃同じように作られたのが、ダイビングステージです。 釣り堀ステージと隣り合って設置されています。ダイバーはビーチからではないので楽にエントリーとエキジットができて快適なダイビングが楽しめます。 受付にはホースが取り付けられた水道があり、水を浴びたり、器材を洗ったりすることができます。もちろん釣り客も利用します。 このダイバーへの海の解放案は、後述する民間施設によってもたらされました。 ダイバーはこの民間施設のタンクしか使用を認められていませんが、このタンクにはタンクの首の部分に黄色の識別色が塗られていて、民間施設のチェックを受けたレジャーダイバーのみがダイビングステージを利用できます。 嬉しいことにこのダイバーたちは全員施設使用料を支払ってくれるのです。 漁協がダイバーのために追加して供給したのは、水中に張り出した梯子を装備したステージだけなのです。 ダイバーに海を開放したとたん、密漁はなくなったそうです。 黙認の段階では、いくら受付(監視所)があってもレジャーダイバーに紛れ込んだ密漁者を見つけ出すのは困難だったようです。 ダイビング施設THE101というのは民間の施設で、ダイバー用のトレーニングプールと更衣室、シャワー、器材洗い場、風呂、飲食ブース、研修室、タンクチャージ施設を持っています。 ここでは、通り崎に潜るダイバーのためにタンクの供給とミニバスによる送迎・水中ガイド・水中でのダイバー管理を行っていますが、事業収入の内訳はタンク貸出料とこの施設自体の施設使用料です。 同じような施設が、近年和歌山県白崎に第3セクターとして誕生しています。 漁協はこの施設を誘致することにより、自己資金を投ぜずして多くのダイバーを集めることに成功したのです。 このことは毎年保証される多額の施設使用料(入海料)を手にしたことに他なりません。今では毎年約3万人のダイバーが土肥を訪れるそうです。 土肥漁業協同組合では、その後ボートダイビングも許可しました。 ボートは漁協に登録した20人の船頭さんが交代で船を出し、ダイビングサービスと密漁監視を同時に行っています。 ダイバーはタンク1本のみを使用するダイビングで1人2.000円を支払い、タンク2本のダイビングでは1人3.500円を支払います。 この金額は全て船頭さんの収入となり、1人につき1.000円の施設使用料(岸壁のトイレや水道の施設)は全て漁協の収入となります。 各船頭さんへの連絡や各船へのダイバーの分配、ボートダイビング費用・施設使用料の徴収は全て民間施設101が無償で引き受けてくれています。 ボートダイビングで使用するタンクも識別色が塗られたものでなければならないからです。 入海料については、戦後の法改正により「海は国民のもの」となったため、ダイバーを海から閉め出すことと同様、これを徴収することは違法となります。 しかし、トイレ・シャワーなどの施設を提供し、その施設を利用する人たちから施設使用料を徴収するのであれば問題ありません。 土肥漁協では、シャワー・トイレのほかにダイバー用魚礁(水中造形物)、ダイビングステージ、沈船の設置等を行っています。 毎年少しずつ海の中が魅力的になるのであれば、ダイバーは施設使用料の支払いには喜んで応じてくれます。 黄金崎は伊豆国定公園の景勝地です。公園内の海岸・海中はとても美しく、多くの魚たちが乱舞しています。 国定公園内であるため、一般の人(民間会社)は公園内に建築物を建てることはできません。 ダイバーが海に出るためには、岬の駐車場からとても長い遊歩道を歩くしかなく、海に潜る人はほとんどいませんでした。 安良里村役場は、ビーチを整備しダイバーたちの器材が運搬できるよう公園管理用の道路を造りました。 管理道路ですから一般の人(ダイバー)は利用できません。 ダイバーは急坂に設置されたモノレール(ミカン畑にあるものを列車風に改造したもの)で海岸まで移動します。 役場はこの道路やビーチの更衣室・シャワー・風呂・器材洗い場等の施設を整備しましたが、ダイビングサービスは営利事業となるため役場自体が運営することができません。 役場はこの施設の運営を安良里漁業協同組合にまかせました。 安良里漁協ダイビングセンターは上記の黄金崎ダイビングセンターの運営と漁協競り場を改装した施設でのボートダイビングサービス事業を行っています。 しかし、漁協組合員にはサービスのノウハウを持った人はいません。 土肥漁業協同組合でのダイビング施設THE101の例が示すとおり、ダイビングの際には海に入ってダイバーたちをコントロールするサービス側のインストラクターや水中ガイドが必要です。 この体制が確立できないとダイビング事故が多発してしまいます。 実際には民間会社「安良里ダイビングセンター」がこの仕事をほとんど全て請け負っています。 漁協組合員が行う業務は、漁協所有のチャージ施設内で行うレンタルタンクのエアー充填作業だけです。 安良里ダイビングセンターは民間会社であるため、国定公園内での独自の営利事業は行えません。 正式に言うと、安良里漁業協同組合に対してダイビングインストラクターを人材派遣しているだけなのです。 このため、この会社は役場の作った施設で漁協に雇われる人を派遣する人材派遣会社ということになります。 設備投資は行わず、純粋にダイバーへのサービス業務だけを行っています。 人材派遣費は安良里漁業協同組合が支払います。 安良里漁業協同組合は大規模な投資が必要な高圧ガス製造施設を作りました。 現在のところ漁協を利用するダイバーの数は、年間1万人くらいですから、元手をすぐに取り返せそうですが、なかなか難しいようです。 空気の原価はタダですが、製造施設は毎年、タンクは5年ごとに法定検査を受けなければなりません。 これには大きな費用が必要となります。また、チャージ施設で働く組合員の方たちに支払う給与も必要です。 また、安良里漁業協同組合の場合は、この収入から人材派遣費用を支払っています。 1本1,800円のレンタル料収入があっても、初期投資額がおそらく3,000万円はかかっていますから、短期間で元手を回収するには、まだまだ受け入れるダイバーの数を増やす必要があります。 このように、訪れるダイバー数が少ない場合はタンクレンタル業を軌道に乗せるには大変なところがありますが、雇用の創出という面では良い取り組みかもしれません。 何といっても漁協にお金を落とすにはこれが一番です。 年間1万人のダイバーを受け入れる安良里漁業協同組合では、1年間に1.000万円の施設使用料が入ってくる計算になります。 あまり施設にお金をかけない方が収益率は上がりますが、ダイバーの満足度が低いようでしたら、受入数の増加は望めません。 入ってきたお金の半分くらいを新たな施設整備に回すとよいのではないでしょうか。 津屋崎は福岡市と北九州市の中間に位置する景勝地です。 先に述べたように福岡県内ではダイバーの海面利用を許可している漁協はなく、黙認の形を取っているのが志賀島と津屋崎です。 繰り返しますが黙認せざるを得ないのは、ダイバーの海面利用を禁止することは漁業法という法律に触れるからです。 県内の他の漁協が禁止も黙認もしていないのは、ダイビングに適した海面を持っていないからです。 綺麗な海があっても交通の面でアクセスが悪ければ、ダイバーはやって来ません。志賀島の海が最近汚れてきているので、福岡県内のダイビングスポットとしては津屋崎(恋の浦)が一番といえるでしょう。 ダイバーの数はどうでしょう。日本のダイバー人口が60万人と言われてから10年近くが経過しています。現在までのダイバー人口の増加を考えると、福岡県内には数万人のダイバーがいる計算になります。 しかし、福岡のダイバーは志賀島や恋の浦ではあまり潜りません。 潜っているダイバーのほとんどは初心者講習中の入門ダイバーです。 このことは、津屋崎の漁協がダイバーの海面利用に消極的なことだけが理由ではありません。 講習を終えたダイバーは長崎や天草・鹿児島・大分・宮崎・沖縄の海で潜ります。 東京のダイバーは伊豆で講習を受け、伊豆で潜っていますので、福岡のダイバーが恋の浦で講習を受け、恋の浦で潜るようになるのが本来は自然なことなのです。 残念ながら、恋の浦の海は綺麗でも、駐車スペースやトイレ・シャワー・器材洗い場がなく、多くのダイバーが利用する周辺環境が整っていないのです。 長崎や天草・鹿児島・大分・宮崎・沖縄の海では、この周辺環境が小規模ながら整っています。 津屋崎の場合、福岡市と北九州市に挟まれ、ダイビングゲレンデとしての立地条件は最高に整っています。 漁業協同組合の多角経営の一環として、ダイバーに海面を開放することは、是非、検討すべき事項です。 恋の浦をダイビングスポットとして開放し、施設使用料を徴収するためには、まず、駐車スペースを確保する必要があります。 エントリー地点が岸壁沿いなので、路上駐車を認めるわけにはいきません。 恋の浦に現在設置されている密漁監視所の付近を駐車場として開発し、監視所前のビーチからエントリーさせるのが一番無難な方法だと思います。 この駐車場を整備するのはもちろん津屋崎町ということになります。ウミガメの保護や観光のためにも、大きな駐車場は必要だからです。 もし、町に駐車場とトイレを作ってもらえたら、漁協はシャワー・器材洗い場を整備すればよいでしょう。 風呂や休憩所・更衣室は、漁協に入る施設使用料の一部を使って、その後整備すればよいのです。 町との話がうまく行けば、最初からこれらの施設を作ってもらうことも可能かもしれません。 密漁を防止するためにも、ダイバーが使用するタンクは指定すべきです。 漁協が自前でチャージ施設を作ることは経済的に困難な問題があると思われますが、土肥漁協の例を参考にしてみましょう。 もしかすると漁業振興基金等の予算が配分される可能性もあります。 ボートダイビングを始めるのは、やはり恋の浦のビーチ開放が進んでからが良いと思われます。 もし、土肥漁業協同組合のように、大資本の民間企業が誘致できれば、いきなりビーチとボートで一挙に集客すればよいのですが、そうでない場合は、安良里漁業協同組合のように漁村センターや競り場を改装してビーチのダイバーをボートにも案内することの方が、漁協の初期投資額も少なくて済み、現実的だと思います。 しかし、考えようによっては、ビーチに駐車場やその他の施設を整備するには時間がかかります。 早い段階でダイバーを受け入れることを考えた場合は、ボート優先でもかまわないと思います。 いずれにしても、ボートダイビングを実施に移すには、絶対に守らねばならないルールがあります。 まず、第一に安全思想の徹底と、ボート側の危機管理訓練が必要です。 もし、事故が起これば、漁業協同組合は相当な痛手を受けます。 ダイバーの側に原因がある場合でも、最良の救助体制を整えておかなければいけません。 第二に、複数の船がダイバーを乗せるわけですから、「ちょっとくらいならサザエを獲ってもいいよ。」と決して言ってはいけません。 例えば10隻の船のうち1隻でもこれを許してしまうと、全員が認めざるを得なくなるからです。 もし、全員で認めるのなら2.000円くらいの入海料を余分に徴収し、定期的にサザエを放流しておくということも考えられますが・・・。 しかし、まずは安全に潜らせることが第一であり、サザエの放流は応用編です。このことは、また、次の機会に研究したいと思います。 第三のルールは、サービス意識の徹底です。 これまでの漁業とは一線を画したサービス業に従事するのです。 船頭さんも作業着ではなく、漁協のロゴの入ったポロシャツ等、サービス業にふさわしい服装や言葉遣いが必要です。 施設使用料については、伊豆地区では1.000円に統一されているようです。 先ほど述べたように特殊なサービスを付加するならともかく、これくらいの使用料が妥当なのではないでしょうか。 1.000円の使用料が必要でも、駐車場やトイレ・シャワー・器材洗い場が使えることは、ダイバーにとってとても喜ばしいことです。 要は、ダイバーが快適だと感じる環境で、これなら仕方ないと思う価格を設定することです。 これまで述べてきたように、本校に隣接する津屋崎漁業協同組合や他の県内漁業協同組合については、今や変革の時が来ていると思われます。 団塊の世代への余暇利用サービスの提供や、手近なダイビングエリアの提供、これらは正に時を得た漁業協同組合発展のための好材料といえます。 水産業が漁業のみの枠から発展し、総合的な海洋開発時代(自然融合型の開発)へ羽ばたく時なのです。 しかもこの変革は、国が補助金を出して取り組む大がかりなプロジェクトではなく、地方の力のみで手にすることができるものです。 もし、今回の研究(提言)が津屋崎漁業協同組合に受け入れられれば、この研究はやがて福岡県の産業界発展のため、また、福岡県の人々が海を愛し、本当の意味で平等に海の恩恵を受けるための1つの足がかりになるでしょう。 今回の研究が、意味あるものになるよう祈念して、終わりとします。
今回のレポートにおけるダイビング事業とは、一般のダイビングショップやダイビングサービスが行う第3次産業としてのものとは違い、水産業として取り組まれるいわば変形第1次産業と呼べる内容を指します。 現在福岡県内の各漁協は、レジャーダイビングに対してNOの姿勢を貫いており、ダイビングとは漁業生産に害を与えるものとしてとらえています。 しかし、西伊豆地区では、漁業協同組合が積極的にレジャーダイバーを受け入れ、漁業経営の一環として事業を展開しています。 ダイビング指導者を養成している本校では、この西伊豆地区の事業展開を分析し、今後の福岡県内各漁協に経営コンサルティング活動ができるよう、研究を進めることにしました。 土肥漁業協同組合は土肥・小下田・八木沢の3組合が合併してできた漁協です。合併前の土肥では遊魚・民宿経営・刺し網漁、小下田と八木沢では遊魚・素潜り・刺し網漁が行われていました。 今から約13年前伊豆地方では水揚げ量が減少し、伊豆半島内の各漁業協同組合は経営不振に喘いでいました。 その頃、伊東・雲見・大瀬崎の3漁協はダイバーに対して海を開放し始め、ダイバーがそれぞれの地域に経済的に貢献している様子が聞かれるようになりました。 小さなところでは、飲食店や弁当屋、タンクレンタル業者(ダイバーが使用する高圧空気が入ったエアータンクを貸し出す業者)にお金が落ちているということでした。 また、入海料(トイレやシャワー室等の施設使用料)は漁協にとても大きな利益をもたらすらしいのです。 土肥は漁村であることと同時に古くからの温泉街でもあります。 組合員の中にも旅館や民宿を経営する人たちがいます。まずは、この人たちがタンクレンタル業を始めようという計画があったそうです。 しかし、これでは個人にしか利益が出ないため、組合として海を開放することが難しい上、レンタル業を始めるための資金、高圧ガス免許取得の難しさ等、解決が困難な問題がいくつかありました。 また、「ダイバー=密漁者」と思いこむ組合員も多く、ダイバーに対する海の開放は絶対に阻止せねばならないという意見も強かったそうです。 土肥漁協内には台風でも波が入らない「通り崎」という小さな湾があります。手前側はゴロタ石のビーチで両岸は切り立っています。 海底は岸から50mも泳ぐと深くなり始め湾の中心で30mの水深があります。 おまけにこの湾の中心に沈船があり、魚が多く集まっています。 漁協はこの湾に浮き桟橋を設置し、その先端には中心が生け簀となった釣り堀ステージが繋がれています。 施設名は「フィッシングパーク・TOI」、桟橋の付け根には釣り堀の受付を兼ねた管理棟があり、密漁監視所としても機能しています。 常時密漁監視ができる上、釣り客は施設使用料を払ってくれます。 この頃同じように作られたのが、ダイビングステージです。 釣り堀ステージと隣り合って設置されています。ダイバーはビーチからではないので楽にエントリーとエキジットができて快適なダイビングが楽しめます。 受付にはホースが取り付けられた水道があり、水を浴びたり、器材を洗ったりすることができます。もちろん釣り客も利用します。 このダイバーへの海の解放案は、後述する民間施設によってもたらされました。 ダイバーはこの民間施設のタンクしか使用を認められていませんが、このタンクにはタンクの首の部分に黄色の識別色が塗られていて、民間施設のチェックを受けたレジャーダイバーのみがダイビングステージを利用できます。 嬉しいことにこのダイバーたちは全員施設使用料を支払ってくれるのです。 漁協がダイバーのために追加して供給したのは、水中に張り出した梯子を装備したステージだけなのです。 ダイバーに海を開放したとたん、密漁はなくなったそうです。 黙認の段階では、いくら受付(監視所)があってもレジャーダイバーに紛れ込んだ密漁者を見つけ出すのは困難だったようです。 ダイビング施設THE101というのは民間の施設で、ダイバー用のトレーニングプールと更衣室、シャワー、器材洗い場、風呂、飲食ブース、研修室、タンクチャージ施設を持っています。 ここでは、通り崎に潜るダイバーのためにタンクの供給とミニバスによる送迎・水中ガイド・水中でのダイバー管理を行っていますが、事業収入の内訳はタンク貸出料とこの施設自体の施設使用料です。 同じような施設が、近年和歌山県白崎に第3セクターとして誕生しています。 漁協はこの施設を誘致することにより、自己資金を投ぜずして多くのダイバーを集めることに成功したのです。 このことは毎年保証される多額の施設使用料(入海料)を手にしたことに他なりません。今では毎年約3万人のダイバーが土肥を訪れるそうです。 土肥漁業協同組合では、その後ボートダイビングも許可しました。 ボートは漁協に登録した20人の船頭さんが交代で船を出し、ダイビングサービスと密漁監視を同時に行っています。 ダイバーはタンク1本のみを使用するダイビングで1人2.000円を支払い、タンク2本のダイビングでは1人3.500円を支払います。 この金額は全て船頭さんの収入となり、1人につき1.000円の施設使用料(岸壁のトイレや水道の施設)は全て漁協の収入となります。 各船頭さんへの連絡や各船へのダイバーの分配、ボートダイビング費用・施設使用料の徴収は全て民間施設101が無償で引き受けてくれています。 ボートダイビングで使用するタンクも識別色が塗られたものでなければならないからです。 入海料については、戦後の法改正により「海は国民のもの」となったため、ダイバーを海から閉め出すことと同様、これを徴収することは違法となります。 しかし、トイレ・シャワーなどの施設を提供し、その施設を利用する人たちから施設使用料を徴収するのであれば問題ありません。 土肥漁協では、シャワー・トイレのほかにダイバー用魚礁(水中造形物)、ダイビングステージ、沈船の設置等を行っています。 毎年少しずつ海の中が魅力的になるのであれば、ダイバーは施設使用料の支払いには喜んで応じてくれます。 黄金崎は伊豆国定公園の景勝地です。公園内の海岸・海中はとても美しく、多くの魚たちが乱舞しています。 国定公園内であるため、一般の人(民間会社)は公園内に建築物を建てることはできません。 ダイバーが海に出るためには、岬の駐車場からとても長い遊歩道を歩くしかなく、海に潜る人はほとんどいませんでした。 安良里村役場は、ビーチを整備しダイバーたちの器材が運搬できるよう公園管理用の道路を造りました。 管理道路ですから一般の人(ダイバー)は利用できません。 ダイバーは急坂に設置されたモノレール(ミカン畑にあるものを列車風に改造したもの)で海岸まで移動します。 役場はこの道路やビーチの更衣室・シャワー・風呂・器材洗い場等の施設を整備しましたが、ダイビングサービスは営利事業となるため役場自体が運営することができません。 役場はこの施設の運営を安良里漁業協同組合にまかせました。 安良里漁協ダイビングセンターは上記の黄金崎ダイビングセンターの運営と漁協競り場を改装した施設でのボートダイビングサービス事業を行っています。 しかし、漁協組合員にはサービスのノウハウを持った人はいません。 土肥漁業協同組合でのダイビング施設THE101の例が示すとおり、ダイビングの際には海に入ってダイバーたちをコントロールするサービス側のインストラクターや水中ガイドが必要です。 この体制が確立できないとダイビング事故が多発してしまいます。 実際には民間会社「安良里ダイビングセンター」がこの仕事をほとんど全て請け負っています。 漁協組合員が行う業務は、漁協所有のチャージ施設内で行うレンタルタンクのエアー充填作業だけです。 安良里ダイビングセンターは民間会社であるため、国定公園内での独自の営利事業は行えません。 正式に言うと、安良里漁業協同組合に対してダイビングインストラクターを人材派遣しているだけなのです。 このため、この会社は役場の作った施設で漁協に雇われる人を派遣する人材派遣会社ということになります。 設備投資は行わず、純粋にダイバーへのサービス業務だけを行っています。 人材派遣費は安良里漁業協同組合が支払います。 安良里漁業協同組合は大規模な投資が必要な高圧ガス製造施設を作りました。 現在のところ漁協を利用するダイバーの数は、年間1万人くらいですから、元手をすぐに取り返せそうですが、なかなか難しいようです。 空気の原価はタダですが、製造施設は毎年、タンクは5年ごとに法定検査を受けなければなりません。 これには大きな費用が必要となります。また、チャージ施設で働く組合員の方たちに支払う給与も必要です。 また、安良里漁業協同組合の場合は、この収入から人材派遣費用を支払っています。 1本1,800円のレンタル料収入があっても、初期投資額がおそらく3,000万円はかかっていますから、短期間で元手を回収するには、まだまだ受け入れるダイバーの数を増やす必要があります。 このように、訪れるダイバー数が少ない場合はタンクレンタル業を軌道に乗せるには大変なところがありますが、雇用の創出という面では良い取り組みかもしれません。 何といっても漁協にお金を落とすにはこれが一番です。 年間1万人のダイバーを受け入れる安良里漁業協同組合では、1年間に1.000万円の施設使用料が入ってくる計算になります。 あまり施設にお金をかけない方が収益率は上がりますが、ダイバーの満足度が低いようでしたら、受入数の増加は望めません。 入ってきたお金の半分くらいを新たな施設整備に回すとよいのではないでしょうか。 津屋崎は福岡市と北九州市の中間に位置する景勝地です。 先に述べたように福岡県内ではダイバーの海面利用を許可している漁協はなく、黙認の形を取っているのが志賀島と津屋崎です。 繰り返しますが黙認せざるを得ないのは、ダイバーの海面利用を禁止することは漁業法という法律に触れるからです。 県内の他の漁協が禁止も黙認もしていないのは、ダイビングに適した海面を持っていないからです。 綺麗な海があっても交通の面でアクセスが悪ければ、ダイバーはやって来ません。志賀島の海が最近汚れてきているので、福岡県内のダイビングスポットとしては津屋崎(恋の浦)が一番といえるでしょう。 ダイバーの数はどうでしょう。日本のダイバー人口が60万人と言われてから10年近くが経過しています。現在までのダイバー人口の増加を考えると、福岡県内には数万人のダイバーがいる計算になります。 しかし、福岡のダイバーは志賀島や恋の浦ではあまり潜りません。 潜っているダイバーのほとんどは初心者講習中の入門ダイバーです。 このことは、津屋崎の漁協がダイバーの海面利用に消極的なことだけが理由ではありません。 講習を終えたダイバーは長崎や天草・鹿児島・大分・宮崎・沖縄の海で潜ります。 東京のダイバーは伊豆で講習を受け、伊豆で潜っていますので、福岡のダイバーが恋の浦で講習を受け、恋の浦で潜るようになるのが本来は自然なことなのです。 残念ながら、恋の浦の海は綺麗でも、駐車スペースやトイレ・シャワー・器材洗い場がなく、多くのダイバーが利用する周辺環境が整っていないのです。 長崎や天草・鹿児島・大分・宮崎・沖縄の海では、この周辺環境が小規模ながら整っています。 津屋崎の場合、福岡市と北九州市に挟まれ、ダイビングゲレンデとしての立地条件は最高に整っています。 漁業協同組合の多角経営の一環として、ダイバーに海面を開放することは、是非、検討すべき事項です。 恋の浦をダイビングスポットとして開放し、施設使用料を徴収するためには、まず、駐車スペースを確保する必要があります。 エントリー地点が岸壁沿いなので、路上駐車を認めるわけにはいきません。 恋の浦に現在設置されている密漁監視所の付近を駐車場として開発し、監視所前のビーチからエントリーさせるのが一番無難な方法だと思います。 この駐車場を整備するのはもちろん津屋崎町ということになります。ウミガメの保護や観光のためにも、大きな駐車場は必要だからです。 もし、町に駐車場とトイレを作ってもらえたら、漁協はシャワー・器材洗い場を整備すればよいでしょう。 風呂や休憩所・更衣室は、漁協に入る施設使用料の一部を使って、その後整備すればよいのです。 町との話がうまく行けば、最初からこれらの施設を作ってもらうことも可能かもしれません。 密漁を防止するためにも、ダイバーが使用するタンクは指定すべきです。 漁協が自前でチャージ施設を作ることは経済的に困難な問題があると思われますが、土肥漁協の例を参考にしてみましょう。 もしかすると漁業振興基金等の予算が配分される可能性もあります。 ボートダイビングを始めるのは、やはり恋の浦のビーチ開放が進んでからが良いと思われます。 もし、土肥漁業協同組合のように、大資本の民間企業が誘致できれば、いきなりビーチとボートで一挙に集客すればよいのですが、そうでない場合は、安良里漁業協同組合のように漁村センターや競り場を改装してビーチのダイバーをボートにも案内することの方が、漁協の初期投資額も少なくて済み、現実的だと思います。 しかし、考えようによっては、ビーチに駐車場やその他の施設を整備するには時間がかかります。 早い段階でダイバーを受け入れることを考えた場合は、ボート優先でもかまわないと思います。 いずれにしても、ボートダイビングを実施に移すには、絶対に守らねばならないルールがあります。 まず、第一に安全思想の徹底と、ボート側の危機管理訓練が必要です。 もし、事故が起これば、漁業協同組合は相当な痛手を受けます。 ダイバーの側に原因がある場合でも、最良の救助体制を整えておかなければいけません。 第二に、複数の船がダイバーを乗せるわけですから、「ちょっとくらいならサザエを獲ってもいいよ。」と決して言ってはいけません。 例えば10隻の船のうち1隻でもこれを許してしまうと、全員が認めざるを得なくなるからです。 もし、全員で認めるのなら2.000円くらいの入海料を余分に徴収し、定期的にサザエを放流しておくということも考えられますが・・・。 しかし、まずは安全に潜らせることが第一であり、サザエの放流は応用編です。このことは、また、次の機会に研究したいと思います。 第三のルールは、サービス意識の徹底です。 これまでの漁業とは一線を画したサービス業に従事するのです。 船頭さんも作業着ではなく、漁協のロゴの入ったポロシャツ等、サービス業にふさわしい服装や言葉遣いが必要です。 施設使用料については、伊豆地区では1.000円に統一されているようです。 先ほど述べたように特殊なサービスを付加するならともかく、これくらいの使用料が妥当なのではないでしょうか。 1.000円の使用料が必要でも、駐車場やトイレ・シャワー・器材洗い場が使えることは、ダイバーにとってとても喜ばしいことです。 要は、ダイバーが快適だと感じる環境で、これなら仕方ないと思う価格を設定することです。 これまで述べてきたように、本校に隣接する津屋崎漁業協同組合や他の県内漁業協同組合については、今や変革の時が来ていると思われます。 団塊の世代への余暇利用サービスの提供や、手近なダイビングエリアの提供、これらは正に時を得た漁業協同組合発展のための好材料といえます。 水産業が漁業のみの枠から発展し、総合的な海洋開発時代(自然融合型の開発)へ羽ばたく時なのです。 しかもこの変革は、国が補助金を出して取り組む大がかりなプロジェクトではなく、地方の力のみで手にすることができるものです。 もし、今回の研究(提言)が津屋崎漁業協同組合に受け入れられれば、この研究はやがて福岡県の産業界発展のため、また、福岡県の人々が海を愛し、本当の意味で平等に海の恩恵を受けるための1つの足がかりになるでしょう。 今回の研究が、意味あるものになるよう祈念して、終わりとします。 |
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