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HOME > 理論サポート > ダイビングアクシデントに際してのCPR
2007/02/07 JCUEメーリングリスト に投稿されたおタハラ部長こと田原さんの記事を本人の了解
の下掲載させてもらいました。
- 先週土曜の小田原セミナーの公演を聴いて、ダイビングアクシデントに際してのCPRに関するかねてよりの疑問がさらに疑問の度合いを深めたので、皆さんのご意見をお聞かせ下さい。
- AHA2005が想定しているのは心臓自体の問題によって起こった心停止だと思います。
- その場合は細動を除いて正常な収縮を再開させるための除細動(AED)も重要だろうし、とにかく血圧を上げるための心臓マッサージが大切だろうということは想像が付きます。
- 吹き込みより心マッサージ重視、15回より30回というのは、お話を伺う限り、大いに有効な変更だと思いました。
- 将来的には吹き込みよりさらに心マッサージが重視される、というのも、仮死状態の体はほとんど酸素を消費しないとされていますから納得。
- が、ダイビングアクシデントの場合もそっくりその考え方を当てはめていいのでしょうか?
- 例えば溺水による心停止は、まず呼吸が止まり、体が低酸素状態になり、その結果心臓が停止するというパターンが多いと聞いています。
- そんな時に吹き込みを軽視して心マッサージのみを重視しても、循環する血液は結局低酸素。
- これでは血圧が上がっても組織に酸素は供給されないように思います。
- 低酸素状態によって起きた異常を回復させるには、とりあえず酸素を豊富に含んだ血液を循環させることが大切なのではないでしょうか。
- つまり、確実な吹き込みは心マッサージを有効にするための前程条件なのではないかと僕は思うのです。
- さらに、吹き込みの間隔も、あまり間を空けすぎるのはまずいような…。
- というのも、一度低酸素になった組織の酸素濃度を上げるのは、けっこう大仕事で、少しばかり酸素を入れても、なかなかまともな数値には戻らないと思うからです。
- この点は以前、自分で人体実験をしたことがあります。
- リブリーザーのアクシデントで一番多いのが、酸素タンクのバルブを開け忘れて潜ったり、メインスイッチを入れ忘れて潜ったりという、ヒューマンエラーを原因とした酸素不足によるブラックアウトです。
- リブリーザーには呼吸中枢を刺激する二酸化炭素を除去するシステムが組み込まれているため、酸素をプラスするシステムが作動していなくても、いわゆる息苦しさは感じません。
- 息苦しさを感じないから異常に気付かず、そのまま呼吸を続けているとやがて酸素分圧が大きく下がり(特に水深を上げた瞬間)、切迫感のない異常感を経て、ごく短時間でブラックアウトに行き着く、ということになっています。
- で、これが本当かどうか、以前試してみました。
- 深刻な事態に陥る前の時点での何かの兆候でも分かれば、実践で自分自身がヒューマンエラーをしでかした時に、深刻な状況に陥る手前でコトの深刻さに気付くことが出来るかもしれない、と思ったからです。
- 陸上で、インストラクターの友人に失神した際の対応の手順を教え、というか、確認し、電気的なシステムの作動スイッチが入っていないリブリーザーで呼吸を続けてみただけです。
(もちろん、失神する手間で実験を中止する気でした)。
- 呼吸ガスの酸素分圧はVR3という酸素分圧を測定する機能を備えたダイブコンピューターでチェックしつつ、酸素分圧のリミットは0.12と決め、普段はDANのキットに海に同伴出勤しているパラオキシメーター(血中の酸素飽和度を測る機器)も指にセット、呼吸ガスと血中酸素飽和度チェックの二本立て体制を整えてトライしてみたところ、呼吸ガスの酸素濃度が下がると、いわゆる息苦しさは感じないものの、やはり完調とは明らかに異なる、何かが足りない枯渇完が感じられました(パラオキシメーターは50%代を表示。
- ちなみに普段の僕を測定した場合の数値は98%程度)。これなら自覚できるな、と思ったところで意識がもうろうとし始めた”気”がしたので、実験終了。
- 酸素給気ボタンを押しながらフラッシングをしてVR3の表示を0.7まで上げました(システム内をEAN70で満たしたことになります)。
- ところが、普通に呼吸をするだけで、VR3の数値が面白いように落ちます。
あっと言う間に0.3を切ったので、再度フラッシングしてPO2を0.7に戻したのですが、やはりPO2表示はかなりのスピードで低下。
- 3回目のフラッシングでやっと落ち着いた低下スピードを示すようになりました。
- なかなか興味深い結果だったので、試しに、昼飯を挟んで、今度はごく普通の状態でPO2を0.7に上げたリブリーザーで呼吸をしてみたところ、PO2の低下っぷりは先ほどとは全く別人の様相であきらかに穏やか。
- 体内の酸素分圧が大きくダウンした状態からの回復にはかなり多量の酸素が必要なんだなぁ、感慨深かったものです。
- 一般に呼吸ガスのPO2が0.16を切ったところで、呼吸ガスと体内酸素分圧の分圧勾配の傾きが逆転、組織内で酸素が消費されるだけでなく、部位によっては呼吸ガスに酸素が吸い出されることにもなって、低酸素状態は加速度的に進むとされていますから、最初の時点の僕の体の低酸素っぷりはなかのモンだったと思います。
- しかし、低酸素で心停止に至った溺者の組織の低酸素ぶりが、その時の僕より悪い状態であろうことは想像に難くありません。
- で、本題に戻りますが、吹き込みが不完全な状態で心マッサージを行っても、従って、体内の酸素分圧を正常な状態(危機的な状態から脱することが可能な状態)に近づけるような酸素供給は、理屈の上では難しいように思います。
- また、新たな酸素の供給が行われていない血液を循環させると、例えば心停止後の痙攣なので組織酸素分圧が周囲より、より大きく低下した組織があった場合、その組織が血中の酸素を奪うことで、以降の循環先の組織との酸素分圧の分圧勾配の逆転が起こり、血液が組織の酸素を奪うような状況も現れて状況の一層の悪化を招くようなことも考えられる気がするのですが、どーでしょう。
- ということで、そうした状態では心マッサージの回数を多くして血圧を上げるよりも、ある程度のインターバルで吹き込みを行い、なるべく酸素分圧を上げた血液を循環すべく心マッサージを再開した方が理屈の上では正しい気がするのです。
- そんな面、あんな面から、僕はAHAのやり方やAEDの導入を水の事故におけるCPRにそっくり移行させるのはどんなモンだろう、という疑問を感じます。案外AHA2000あたりのやり方が、ダイビング事故におけるCPRには一番フィットしていたんじゃないでしょうか。
- まぁ、これは専門知識のないただのどシロートの考えなので、参考にすべきではありませんが、例えばこうした疑問に、潜水医学の専門家はどう応えてくれるのか、非常に関心があります。
- 機会があったらぜひ尋ねてみたいものですが、皆さんも、もし尋ねる機会があったら、ぜひ尋ねてみてその結果を教えて下さい。
- よろしくお願い致します。
では!
-- Koichi Tahara
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